社員が健康診断を受けないとき、会社はどう対応すべき?|社労士us.office 労務相談
毎年の健康診断は多くの企業にとって当たり前の行事ですが、なかには「忙しいから」「必要ないと思う」と受診を拒む社員もいます。しかし、健康診断は法律で定められた会社と社員の重要な義務です。
今回は、社員が健康診断を受けない場合の対応ポイントをわかりやすく整理します。
そもそも健康診断は「義務」
法律で定められた「年1回の検診」
会社には、社員の健康を守るために健康診断を実施する義務があります。これは「労働安全衛生法」という法律で決められています。
主なものは以下の3種類です。
・定期健康診断:1年に1回実施
・雇い入れ時健康診断:入社時に実施
・特殊健康診断:有害物質などを扱う仕事に従事する人が対象
主にフルタイムの方が対象ですが、具体的には次の2つを満たす方です。
① どれかに該当
・1年以上の雇用契約をしている
・雇用期間を定めていない
・既に1年以上働いている
②1週間に働く時間数がフルタイムの4分の3以上
健康診断を受けるのは社員の義務
会社が「受けてください」と指示した健康診断は、社員に受診の義務があります。ただし、本人には「医師を選ぶ自由」もあり、会社が指定した病院以外で受けることも可能です(法律で定められた内容を満たすことが条件です)。
法定外健診もルールがあれば義務に
会社が独自で定める健康診断(例:年2回の精密検診など)も、就業規則や雇用契約書に定めがあれば義務になります。ただし、次のような「合理的な理由」があることが前提です。
・業務内容に関係がある
・健康や安全を守るために必要
・検査内容が適切である
社員が健康診断を拒否したときの対応
拒否は就業規則違反になる可能性
社員が正当な理由なく健康診断を拒否した場合、就業規則違反として懲戒処分の対象になることがあります。過去の裁判でも、次のようなケースで会社側の対応が認められています。
・教員がX線検査を拒否 → 職務に支障が出るため処分は有効
・指定病院への不信感を理由に拒否 → 医療機関に問題がないため拒否は無効
柔軟な運用でトラブルを防ぐ
会社が複数の医療機関を用意し、社員が選べるようにするなど、選択肢を与える工夫をするとトラブルを防ぎやすくなります。「指定病院が不安」「女性医師がよい」といった社員の声に、ある程度配慮する姿勢も大切です。
記録を残し、段階的に対応する
拒否が続く場合は
・書面で受診指示を出す
・事情をヒアリングする
・懲戒に進む場合は、理由・経緯を明確に記録しておく
という段階的な対応を心がけましょう。
健康診断命令の範囲と注意点
検査内容は「必要な範囲」に限られる
会社が命令できるのは、業務や職場の安全に関係する範囲の検査だけです。たとえば、生活習慣病の検査など一般的な項目は問題ありませんが、個人のプライバシーに踏み込むような過剰な検査は避ける必要があります。
感染症や安全確保の検査は必要
感染症(インフルエンザ・結核・新型コロナなど)や、高所作業・重量物運搬に関する体力検査などは、職場全体の安全を守るために必要と判断されやすいです。
法令違反にならないよう定期的に見直す
健康診断の実施体制や就業規則の内容が、最新の法律に合っているかを定期的に確認しましょう。もしフルタイムの社員が健康診断を一度も受けていない場合、会社側が法令違反となる可能性があります。
まとめ
健康診断は「義務」であり「リスク管理」
・健康診断は会社にも社員にも「義務」
・法定外健診も、合理的な理由があれば義務化可能
・拒否した場合は懲戒処分の対象になりうる
健康診断は、社員一人ひとりの体を守るだけでなく、職場全体の安全を守るためのものです。受診を拒む社員が出た場合も、感情的にならず、ルール・記録・対話を大切に進めましょう。そして会社側も、法令に沿った体制を整えることで、安心して働ける職場づくりにつなげていきましょう。
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