内定取消しはどこまで許される?―リスクと正しい対応|社労士us.office 労務相談

query_builder 2025/10/08
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 採用活動を進め、候補者に内定を出すことは「この人材を迎え入れる」という会社からの公式な意思表示です。しかし業績悪化や経営判断などを理由に「内定を取り消したい」と考える場面も起こり得ます。

 ここで重要なのは内定取消しは単なる採用ストップではなく、法的には「解雇」と同じくらい重い行為だという点です。安易に取り消せば、損害賠償や企業イメージの悪化につながりかねません。

「内々定」と「内定」の違い

内々定

・口頭や簡易通知レベルの“約束”に近い段階

・法的には雇用契約未成立

・ただし、学生や求職者が他の選考を辞退している場合、期待を裏切れば不法行為にあたる可能性あり

内定

・正式な内定通知を交わした時点で雇用契約成立

・「卒業見込み」や「入社日」など条件付き

・内定取消しは契約解除=解雇と同様に扱われ厳しい制限がかかる

内定取消しが認められる場合

新卒・中途に共通する条件

〇致命的な事情がある場合

・健康状態が業務に支障をきたす

・経歴詐称など信頼関係を壊す行為

〇経営悪化による場合(整理解雇と同基準)

・本当に人員削減が必要か(経営危機レベルか)

・他の手段(役員報酬カット等)を尽くしたか

・対象者の選び方が公正か(なぜ内定者なのか)

・誠意ある説明を行ったか

このような条件を満たした場合に、内定取消しが可能となります。

新卒と中途の違い

・新卒採用:学生保護の観点からも取消は難しいことが多いが中途採用よりは可能

・中途採用:前職を退職しているケースが多いため、取消の有効性がより厳しく判断される傾向

対応策

経営者・人事が取るべきリスク回避策

・採用計画を精査する  

 景気や業績に左右されやすい状況では、大量採用より慎重な採用計画を。

・内定通知書に明確な条件を記載

 「卒業」「資格取得」など合理的条件を明記しておく。

・経営状況が変わったら早期に説明

 取消しの可能性があるなら、曖昧にせず速やかに候補者へ伝える。

・法務、労務と連携する

 取消しを検討する際は必ず専門家の意見を仰ぎ、リスクを把握してから対応する。

もし内定を取り消すことになったら

 どうしても取り消さざるを得ない場合、次のような誠意ある対応が不可欠です。

・時間をかけて丁寧に説明

 経営状況や取消に至った背景を具体的に共有する。

・補償の検討

 交通費や就職活動再開の支援金など、相手が被った不利益を和らげる。

・イメージダウンを最小化

 SNS時代では一瞬で評判が広がるため誠実な姿勢を示すことがリスク低減につながる。

まとめ

内定取消しは「最終手段」

・内定は「雇用契約の成立」であり、取消しは解雇と同じ重みを持つ

・業績悪化を理由とする取消しは、整理解雇の4要件を満たさなければならない

・中途採用者に対しては特に厳格に判断される

・経営者、人事としては、計画的な採用・透明性ある説明・誠意ある対応が何より重要

内定取消しは企業にとって大きなリスクです。「どうすれば取り消せるか」ではなく、「取り消さずに済む採用計画とマネジメント」こそが、長期的に会社を守ることにつながります。

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